仕組み
熱電対の原理
2つの異種金属を接続して1つの閉回路をつくり、ふたつの接点に温度差を与えると、回路に電位差(起電力)が発生し電流が流れるという現象がおきます。この現象は、1821年にドイツの物理学者トーマス・ゼーベックによって発見され、ゼーベック効果と呼ばれています。比較的安価で、低温領域から高温まで(-200~ 2200℃ )計測できる事から、近年、工業用として最も繁用されています。
熱起電力の大きさは2 つの金属(A,B) の種類と両接点(T1、T2) の温度のみによって決まり、金属の形状や大きさには無関係です。
熱電対の測定
温度の測定側とは反対の端部を0℃に保ち、熱起電力を測定することで測定対象の温度計測を行う。また、測定側の接点を測温接点と呼び、反対側の0℃に保つ接点を基準接点(冷接点)と呼ぶ。実際に熱電対を温度センサとして使用する場合は、測温接点側を温度を測りたい箇所に設置し、反対側を電圧計に接続します。但し、そのままでは基準接点温度が一定にならないため、基準接点となる部分を氷水の中に入れて0℃とするか、温度補償回路の内蔵された計測器を使用する。
一般型熱電対
一般型熱電対
一般型熱電対とは、様々な管径の中に絶縁管で絶縁された熱電対線を挿入したものです。
【特徴】
- 1, 計測可能温度が広い。
- 2, 比較的安価である。
- 3, 振動に対して優れている。
- 4, 熱応答性が悪くなる場合もあります。
挿入長
炉内等に挿入された熱電対を伝わっての熱伝導誤差を防ぐために、熱電対の熱容量及び熱伝導率に応じて充分な挿入長をとる必要があります。少なくとも保護管、 シース等外径の15 倍以上の挿入長をとるようにして下さい。
熱電対( 素線) の使用温度
熱電対種類 | 線径(mm) | 常用限度(℃) | 過熱使用限度(℃) |
---|---|---|---|
B | 0.5 | 1500 | 1700 |
S、R | 0.5 | 1400 | 1600 |
N | 0.65 | 850 | 900 |
1.0 | 950 | 1000 | |
1.6 | 1050 | 1100 | |
2.3 | 1100 | 1150 | |
3.2 | 1200 | 1250 | |
K | 0.65 | 650 | 850 |
1.0 | 750 | 950 | |
1.6 | 850 | 1050 | |
2.3 | 900 | 1100 | |
3.2 | 1000 | 1200 | |
E | 0.65 | 450 | 500 |
1.0 | 500 | 550 | |
1.6 | 550 | 650 | |
2.3 | 600 | 750 | |
3.2 | 700 | 800 | |
J | 0.65 | 400 | 450 |
1.0 | 450 | 550 | |
1.6 | 500 | 650 | |
2.3 | 550 | 750 | |
3.2 | 600 | 750 | |
T | 0.65 | 200 | 250 |
1.0 | 250 | 300 | |
1.6 | 300 | 350 |
※常用限度とは空気中において使用できる温度の限度をいいます。
※過熱使用限度とは必要上、やむを得ない場合に短時間使用できる限度をいいます。
保護管と素線の組合せ
保護管の外径に対応できる素線を下の表に記載いたしますが、下記以外の対応はお問い合わせください。
保護管 外径 ー 内径 |
素線径 | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
φ1.0 | φ1.6 | φ2.3 | φ3.2 | |||||
シングル | ダブル | シングル | ダブル | シングル | ダブル | シングル | ダブル | |
φ8 ー φ6 | ● | |||||||
φ10 ー φ8 | ● | ● | ||||||
φ12 ー φ10 | ○ | ○ | ● | ● | ||||
φ15 ー φ11 | ○ | ○ | ○ | ● | ● | |||
φ17.3 ー φ13.3 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ● | ● | |
φ21.7 ー φ16.1 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ● | ● |
●:通常仕様 ○:製作可能
許容差
JIS C 1602 では各熱電対の許容差としてクラス1,2,3の3 つの種類を規定しています。
種類 | 許容差の分類 | |||
---|---|---|---|---|
クラス1 | クラス2 | クラス3 | ||
B | 温度範囲 許容差 |
– – |
– – |
600℃以上800℃未満 ±4℃ |
温度範囲 許容差 |
– – |
600℃以上1700℃未満 ±0.0025・|t| |
800℃以上1700℃未満 ±0.005・|t| |
|
旧階級 | – | – | 0.5級 | |
R | 温度範囲 許容差 |
0℃以上1100℃未満 ±1℃ |
0℃以上600℃未満 ±1.5℃ |
– – |
温度範囲 許容差 |
– – |
600℃以上1600℃未満 ±0.0025・|t| |
– – |
|
旧階級 | – | 0.5級 | – | |
N | 温度範囲 許容差 |
−40℃以上+375℃未満 ±1.5℃ |
−40℃以上+333℃未満 ±2.5℃ |
−167℃以上+40℃未満 ±2.5℃ |
温度範囲 許容差 |
375℃以上1000℃未満 ±0.004・|t| |
333℃以上1200℃未満 ±0.0075・|t| |
−200℃以上−167℃未満 ±0.015・|t| |
|
旧階級 | – | – | – | |
K | 温度範囲 許容差 |
−40℃以上+375℃未満 ±1.5℃ |
−40℃以上+333℃未満 ±2.5℃ |
−167℃以上+40℃未満 ±2.5℃ |
温度範囲 許容差 |
375℃以上1000℃未満 ±0.004・|t| |
333℃以上1200℃未満 ±0.0075・|t| |
−200℃以上−167℃未満 ±0.015・|t| |
|
旧階級 | 0.4級 | 0.75級 | 1.5級 | |
E | 温度範囲 許容差 |
−40℃以上+375℃未満 ±1.5℃ |
−40℃以上+333℃未満 ±2.5℃ |
−167℃以上+40℃未満 ±2.5℃ |
温度範囲 許容差 |
375℃以上800℃未満 ±0.004・|t| |
333℃以上900℃未満 ±0.0075・|t| |
−200℃以上−167℃未満 ±0.015・|t| |
|
旧階級 | 0.4級 | 0.75級 | 1.5級 | |
J | 温度範囲 許容差 |
−40℃以上+375℃未満 ±1.5℃ |
−40℃以上+333℃未満 ±2.5℃ |
– – |
温度範囲 許容差 |
375℃以上750℃未満 ±0.004・|t| |
333℃以上900℃未満 ±0.0075・|t| |
– – |
|
旧階級 | 0.4級 | 0.75級 | – | |
T | 温度範囲 許容差 |
−40℃以上+125℃未満 ±0.5℃ |
−40℃以上+133℃未満 ±1℃ |
−67℃以上+40℃未満 ±1℃ |
温度範囲 許容差 |
125℃以上350℃未満 ±0.004・|t| |
133℃以上350℃未満 ±±0.0075・|t| |
−200℃以上−67℃未満 ±0.015・|t| |
|
旧階級 | 0.4級 | 0.75級 | 1.5級 | |
C | 温度範囲 許容差 |
– – |
426℃以上2315℃ ±0.01・|t| |
– – |
熱電対(素線)の種類と特徴
JIS の熱電対
種類 | +脚 | −脚 |
---|---|---|
B | 白金70%・ロジウム30% | 白金94%・ロジウム6% |
R | 白金87%・ロジウム13% | 白金 |
S | 白金90%・ロジウム10% | 白金 |
N | ナイクロシル | ナイシル |
K | クロメル | アルメル |
E | クロメル | コンスタンタン |
J | 鉄 | コンスタンタン |
T | 銅 | コンスタンタン |
B熱電対 灰 Pt70,Rh30 Pt94,Rh6
常用:1500℃ 最高:1700℃
JIS では、最も高温で計測できます。白金を使用している為、精度は高いが高価格で、1000℃以上の高温度に使用されます。酸化性や不活性雰囲気には、強く還元性雰囲気や炭素の汚染にも弱く劣化致します。金属蒸気中でも極めて弱くなります。600℃以下では起電力が小さくなり不向き。
R熱電対 黒 Pt87,Rh13 Pt100
常用:1400℃ 最高:1600℃
白金の熱電対としては最も多く使用されており、B熱電対と同じ特徴を持ち、安定性に於いては特に優れており、研究室等の標準用として広く使用されています。
S熱電対 黒 Pt90,Rh10 Pt100
常用:1400℃ 最高:1600℃
最も多く使用され、B熱電対と同じ特徴を持ち、安定性に於いては特に優れており、欧米で多く使われている。
N熱電対 桃 Ni,Cr,Si Ni,Si
常用:850 ~ 1200℃ 最高:900 ~ 1250℃
K熱電対の弱点を取り除くため、Si を両極性で増加と+ 極のCr の量を増加させてショートレンジオーダリング特性が減少と耐酸化性と長期安定性が向上し、特に1000℃以上の高温では、熱起電力の長期ドリフトがK熱電対の1/2 ~ 1/3 で、1250℃でも比較的長時間使用できます。
K熱電対 青 Ni,Cr Ni,Al
常用:650 ~ 1000℃ 最高:850 ~ 1200℃
最も多く使用されて、酸化性雰囲気中ではかなり抵抗を示しますが、還元性雰囲気には弱く、特に一酸化炭素や亜硫化ガスなどには使用は不適です。
E熱電対 紫 Ni,Cr Ni,Al
常用:650 ~ 1000℃ 最高:850 ~ 1200℃
最も大きな熱起電力をもつ熱電対。一般的には-200℃から800℃まで使用できます。大型火力、原子力発電等で広く使われています。
J熱電対 黄 Fe Ni,Cu
常用:400 ~ 600℃ 最高:500 ~ 750℃
価格も比較的安価なので中温用によく使用されている熱電対です。還元性雰囲気には強く、水素や炭素に対しても丈夫ですが、酸化性雰囲気では鉄の酸化が早いので不適です。
T熱電対 茶 Cu Ni,Cu
常用:200 ~ 300℃ 最高:250 ~ 300℃
低温域でよく使用され、300℃以下では高精度が得られ、特に-200℃~100℃の低温に適しますが、弱い酸化性や還元性雰囲気にも適しています。
JIS以外の熱電対
種類 | +脚 | ー脚 |
---|---|---|
PR 13 | 白金87.3%・ロジウム12.7% | 白金100% |
PR20-40 | 白金60%・ロジウム40% | 白金80%・ロジウム20% |
WRe0-26 | タングステン | タングステン74%・レニウム26% |
WRe5-26 | タングステン95%・レニウム5% | タングステン74%・レニウム26% |
AF | クロメル | 金・鉄0.07% |
Ir | イリジウム60%・ロジウム40% | イリジウム |
Ni-Mo | ニッケル82%・モリブデン18% | ニッケル |
PN | 白金・パラジウム・金 | 金・パラジウム |
PR 13 熱電対 Pt87.3,Rh12.7 ― Pt100
常用:1400℃ 最高:1600℃
81 年にJIS から外されるまで広く使用されていた熱電対でR 熱電対と同じ特徴があります。設備が旧タイプの規格の場合はおすすめいたします。
白金ロジウム40-20 熱電対 Pt87,Rh13 - Pt100
常用:1800℃ 最高:1900℃
白金の系の熱電対の中では最も高温で使用することができますが、EMFの特性が低い為、高温での高精度の測定には不向きです。
WRe 0-26 熱電対 W ― W74,Re26
常用:2000℃ 最高:2200℃
起電力が非常に大きく還元雰囲気、不活性ガス、水素気体に適する。酸化雰囲気中は極めて脆く。使用に際しては雰囲気・温度に適した絶縁材や保護管材料の選定が重要である。固く曲げは難しい。
WRe 5-26 熱電対 Ni,Cr,Si Ni,Si
常用:2100℃ 最高:2300℃
強度を増すため+脚にもレニウムを入れた合金です。
AF熱電対 Ni,Cr ― Au,Fe
-269 ~+ 20℃
金・鉄-クロメルの熱電対です。極低温で起電力が安定します。
Ir熱電対 Ir60,Rh40 ― Ir,Fe
常用:1800℃ 最高:2000℃
2190℃までの不活性または真空雰囲気に適しています。酸化性または還元性雰囲気では寿命が短い。イリジウムの蒸発による汚染があり脆い。ジェットエンジンの排気温度計として使用された。
NiーMo熱電対 Ni82,Mo18 ― Ni
常用:1000℃ 最高:1200℃
1260℃までの水素および他の還元性雰囲気での使用に適しています。 熱起電力が大きくK と類似のEMF 特性を持ちます。酸化雰囲気では使用できません。また、イプセン炉で使用されています。
PN熱電対 PN熱電対
常用:1200℃ 最高:1300℃
K熱電対の起電力とほぼ等しく、比較的高温で使用できます。
測温接点の種類
測温接点は、使用条件によって次の3つの形状に分けられます。最も適した形状をお選び下さい。
【接地型 G型】 | |
---|---|
![]() |
熱接点がシースの一部に溶接された接地型です。応答速度にも優れていますがノイズが乗り易く、腐食性雰囲気には適していません。 |
【非接地型 U型】 | |
---|---|
![]() |
熱接点が雰囲気より保護され、シースから絶縁された非接地型です。ノイズ対策や腐食性対策に優れており寿命が長くなります。 |
【開放型 E型】 | |
---|---|
![]() |
先端露出型の高感度仕様ですが、高温下での長時間使用や耐蝕性雰囲気には適していません。 |
シース熱電対
シース熱電対
シース熱電対は、ステンレスなどの金属保護管( シース) の中に熱電対素線を入れ、高純度酸化マグネシウム(MgO) で絶縁された熱電対です。
- 1, 広範囲の温度計測
計測可能温度範囲が広く、豊富な種類(R、N、K、E、J、T) のシース熱電対を揃えており、-200℃~ 1050℃まで温度計測が可能です。また、シース外径もφ 0.15mmの極細からφ 8.0mm まであります。 - 2, 優れた耐震性、耐蝕性
シースと素線の間はMgOによって密封され、素線は確実に保護されているので、耐振動性、耐蝕性に優れており、高温、高圧下における連続使用が可能です。 - 3, 素早い応答性
絶縁物(MgO)による密閉構造でシース外径が細くなるほど熱容量が小さくなり急激な温度変化や微少な温度変化にも追従します。 - 4, 曲げが可能
外径の3 倍まで曲げて加工できます。 - 5, 低価格
比較的安価である。
シース熱電対寸法表

(㎜)
外径 D |
素線径 | シース肉厚 t |
|
---|---|---|---|
シングル | ダブル | ||
0.25 | 0.05 | ー | 0.025 以上 |
0.5 | 0.05 | ー | 0.5 以上 |
1.0 | 0.2 | ー | 0.15 |
1.6 | 0.32 | ー | 0.2 |
3.2 | 0.53 | 0.3 | 0.4 |
4.8 | 0.77 | 0.53 | 0.5 |
6.4 | 1.14 | 0.76 | 0.6 |
8 | 1.3 | 0.96 | 0.7 |
* 外径の公差は± 0.025 となります。
* シースの肉厚はシース外径の1/10 以上となります。
シースワイヤー標準品
シースワイヤー標準品として下表に示しますが、●印の無いものについては別注にて制作致しております。
■シングルエレメント | ●:標準品 |
種類 | シース材質 | シース外径 | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
0.25 | 0.5 | 1 | 1.6 | 3.2 | 4.8 | 6.4 | 8 | ||
K | SUS316 | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ||
SUS310S | ● | ● | ● | ● | ● | ● | |||
NCF600(インコネル) | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | |
E | SUS316 | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ||
J | SUS316 | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ||
T | SUS316 | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ||
R | NCF600(インコネル) | ● | ● | ● | ● |
■ダブルエレメント
種類 | シース材質 | シース外径 | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
0.25 | 0.5 | 1 | 1.6 | 3.2 | 4.8 | 6.4 | 8 | ||
K | SUS316 | ● | ● | ● | ● | ||||
SUS310S | ● | ● | ● | ● | |||||
NCF600(インコネル) | ● | ● | ● | ● | |||||
E | SUS316 | ● | ● | ● | ● | ||||
J | SUS316 | ● | ● | ● | ● | ||||
T | SUS316 | ● | ● | ● | ● |
シース熱電対種類別、常用限度
JIS C 1605 において常用限度として下表の通り規定されています。常用限度とは、空気中において連続使用できる温度限度を言います。
種類 | シース外径(mm) | 金属シース | ||
---|---|---|---|---|
SUS316 | SUS310S | NCF600 | ||
N | 0.5 | 600℃ | ー | 600℃ |
1.0、1.6 | 650℃ | ー | 650℃ | |
3.0、3.2 | 750℃ | ー | 750℃ | |
4.5、4.8 | 800℃ | ー | 900℃ | |
6.0、6.4 | 800℃ | ー | 1000℃ | |
8.0 | 900℃ | ー | 1050℃ | |
K | 0.5 | 600℃ | ー | 600℃ |
1.0、1.6 | 650℃ | ー | 650℃ | |
3.0、3.2 | 750℃ | ー | 750℃ | |
4.5、4.8 | 800℃ | 900℃ | ||
6.0、6.4 | 800℃ | 1000℃ | ||
8.0 | 900℃ | 1050℃ | ||
E | 0.5 | 600℃ | ー | 600℃ |
1.0、1.6 | 650℃ | ー | 650℃ | |
3.0、3.2 | 750℃ | ー | 750℃ | |
4.5、4.8 | 800℃ | ー | 900℃ | |
6.0、6.4 | 800℃ | ー | 900℃ | |
8.0 | 800℃ | ー | 900℃ | |
J | 0.5 | 400℃ | ー | 400℃ |
1.0、1.6 | 450℃ | ー | 450℃ | |
3.0、3.2 | 650℃ | ー | 650℃ | |
4.5、4.8 | 750℃ | ー | 750℃ | |
6.0、6.4 | 750℃ | ー | 750℃ | |
8.0 | 750℃ | ー | 750℃ | |
T | 0.5 | 300℃ | ー | 300℃ |
1.0、1.6 | 300℃ | ー | 300℃ | |
3.0、3.2 | 350℃ | ー | 350 ℃ | |
4.5、4.8 | 350℃ | ー | 350 ℃ | |
6.0、6.4 | 350℃ | ー | 350 ℃ | |
8.0 | 350 ℃ | ー | 350 ℃ |
熱電対の起電力(代表例)
時定数
ある温度(T1)におかれた温度センサを他の温度(T2)の環境に移動させた場合、瞬時にT2 に変わるのでは無く必ずある程度の時間の遅れがあります。この時のセンサの温度は時間の経過と共に変化します。温度指示がT1 とT2 の温度差の50%に達した時の時間(θ)を時定数と呼び、応答時間、応答速度とも言います。応答時間の測定は一般的には63.2%又は90%を表す事が多いが、現在のJIS 規格ではIEC 751 との整合化により50%とされています。
時定数はそのセンサの外径、内径、材質、内部構造等により異なり、環境も水中と空気中では全く違います。よって、センサの種類ごとに時定数を表記する事は困難ですので代表的な形状での時定数を下表に示します。下表は測温抵抗体、熱電対とそれぞれのシースタイプの時定数となります。
■シース熱電対(非接地)の時定数
シース外径 | 指示 (%) | 0 → 100℃沸騰水中 応答時間(S) |
---|---|---|
φ 1.0 | 90.0 | 0.2 |
φ 1.6 | 0.5 | |
φ 3.2 | 1.4 | |
φ 4.8 | 3.8 | |
φ 6.4 | 6.9 | |
φ 8.0 | 8.3 |
金属保護管・絶縁管
金属保護管
金属保護管は熱電対や測温抵抗体を保護するために使用します。雰囲気や温度を考慮して選定する必要があります。
■金属保護管
材質 | 常用温度 ℃ |
最高温度 ℃ |
概略組成 | 特 性 |
---|---|---|---|---|
普通鋼 SS400 |
酸化 600 還元 800 |
900 | 耐酸性や酸化に弱いが還元に強い。 | |
SUS304 | 900 | 1000 | 18Cr-8Ni-0.08C-1Si | 耐熱・耐食性に優れた抵抗を示す。 Niを含んでいるのでイオウ還元ガスに弱い。 |
SUS304L | 900 | 1000 | 18Cr-9Ni- 低C | SUS304のカーボン量を少なくしたもの(C=0.03% 以下) で、溶接の熱影響によって生じやすいCr炭化物の析出が少ない耐粒界腐食性材料である。 |
SUS321 | 900 | 1000 | 18Cr-9Ni-Ti | Tiを含みSUS304より耐食性を増す。 特に溶接機の粒界腐食防止に優れている。 |
SUS316 | 900 | 1000 | 18Cr-12Ni-0.08C-2.5Mo | Moを含み耐熱・耐酸・耐アルカリに優れている。 |
SUS316L | 900 | 1000 | 18Cr-12Ni-0.03C-2.5Mo | SUS316のCの量を少なくしたもので、耐粒界腐食材料である。 |
SUS310S | 950 | 1050 | 25Cr-20Ni-0.08C-1.5Si | Ni-Crの含有率が高く、高温での酸化性に強い 耐熱鋼である。 |
SUS347 | 900 | 1000 | 18Cr-9Ni-Nb | Nb-Taを含みSUS304より耐食性を増し、粒界腐食防止に優れている。 |
サンドピック P4 |
1050 | 1125 | 27Cr | フェライト系耐熱鋼。耐熱、耐食性に優れる。硫黄、還元性ガスに強い。27Cr鋼で耐熱材料である。 |
サンドビック 253MA |
1000 | 1200 | 21Cr-11Ni | オーステナイト系耐熱鋼。耐熱、耐食性に優れる。 |
サンドビック 254SMo |
600 | ー | 20Cr-18Ni-6.1Mo | 耐海水ステンレス鋼で他のオーステナイトステンレスに比べ、優れた孔食、隙間腐食に耐性を持ち、海水に対して優れた耐食性を有する。スーパーステンレスとも呼ばれている。 |
UMCO50 | 1100 | 1200 | 50Co-30Cr-20Fe | Co基合金で耐熱・耐摩耗性に強く、サルアルファーにも強い耐熱合金である。 |
NCF600 インコネル600 |
1180 | 1250 | 72Ni-15.5Cr-8Fe-0.5Cu | 高温において酸化・還元のいずれの雰囲気にも強い。 |
インコネル 800 |
870 | 1000 | 42Ni-21.5Cr-3Mo-2.3Cu | 高温酸化性に優れており、特に高温腐食に対してSUS304の約10倍の寿命があり、熱衝撃にも強い。 |
カンタルAF | 1100 | 1400 | 24Cr-5.5Al-Fe | 高温度にて機械的強度大。硫黄成分や浸炭に対して高耐性。 |
ホワイト 80Ni20Cr |
1100 | 1250 | 80Ni-20Cr | 高温耐酸化雰囲気中では、高温強度・耐食性共によいが、硫化雰囲気には不適当である。 |
クリマックス | 1200 | 1400 | 60Cr- 低C | 60%Cr と少量のW、Nb、Ti を含む合金で、溶融化学物質、スラブガスに対する。耐食性に優れ、溶融銅などの金属浸食に強い。 |
ハステロイB | 800 | 1100 | 62Ni-28Mo-5Fe | Ni 基合金で耐熱・耐食性に優れ、特に塩酸・硝酸に対して優れた抵抗を示す。 |
ハステロイC | 1000 | 1100 | 58Ni-17Mo-15Cr-5W | 高温において酸化・還元雰囲気に対して強く、塩素ガスにも強い。 |
ハステロイX | 1175 | 1260 | 22Ni-18Fe-9Mo | 高温でも強度が大きく、主として耐熱材料であり、加工性・溶接性が他のハステロイより優れている。 |
ヘインズ アロイ25 |
980 | 1100 | 25Cr-10Ni-15W | Co 基合金で高温における酸化、炭化性に強い材料である。 |
チタン | 酸化 250 還元 1000 |
800 | 99.5Ti 以上 | 低温における耐食性は極めて優秀であるが、高温では酸化され脆くなる。 |
モネル | 500 | 600 | 68Ni-Cu30 | Ni67 ~ 70% とCu-Fe からなり、高温・高圧に強く耐食性にも優れている。 |
使用温度( 常用温度、最高温度) 雰囲気により異なります。その他材質の保護管の取扱いもございます。
(注) |
|
高温用保護管
■保護管材質の特性概要
材 質 | 融点 (℃ ) |
線膨張係数 ( × 10-6) |
熱伝導率 (Cal・cm-1・℃-1・S-1) |
最高温度(℃ ) | 適合雰囲気 |
---|---|---|---|---|---|
モリブデン Mo |
2622 | 7.2 (at 2000℃ ) |
0.328 | 1900 | V・R・N |
タ ン タ ル Ta |
2850 | 6.6 (at 2000℃ ) |
0.130 | 2200 | V・N(Ar・He) |
ニ オ ブ Nb |
2415 | 9.0 (at 2000℃ ) |
0.132 | 2000 | V・N(Ar・He) |
再結晶アルミナ PT0 |
2050 | 8.6 (at 1000℃ ) |
0.014 | 1800 | R・N・O |
再結晶ベリリア BeO |
2550 | 8.9 (at 1000℃ ) |
0.046 | 2200 | V・R・N・O |
気密質ジルコニア ZrO2 |
2300 | 10.0 (at 1000℃ ) |
0.010 | 2200 | N・O |
■各種炉雰囲気による金属の安定性
雰囲気 | モリブデン | タンタル | ニオブ |
---|---|---|---|
空気または酸素を 含むガス |
400~500℃で酸化 800℃以上で著しく蒸発 |
500℃以上で酸化および 窒化物生成 |
200℃以上で酸化、 窒化 |
乾燥水素 (0.5g/㎜3 の水を含む) |
融点まで酸化せず | 400~800℃で 水素化物 生成融点まで 腐食せず 表面酸化 |
200℃から水素吸収 1900℃で水素化物 生成、脆化 |
水分を含む水素 (20g/㎜3の水を含む) |
1400℃まで酸化せず、以後表面に 針状結晶生成、重量減少 |
450℃以上で 水素化物生成、 著しく酸化 |
200℃から水素吸収 1900℃で水素化物 生成、脆化 |
分解乾燥 アンモニアガス |
融点まで腐食せず | 400℃以上で 窒化物と 水素化物生成、 より高温では 完全に窒化 |
200℃以上で水素 化物、窒化物生成 |
不完全燃焼乾燥 アンモニア |
融点まで腐食せず | 400℃以上で 窒化物と 水素化物生成、 より高温では 完全に窒化 |
200℃以上で水素化物 生成、400℃以上で アンモニアを分解窒化 |
アルゴン、ヘリウム等の 不活性ガス |
融点まで腐食せず | 融点まで腐食せず | ヘリウム中では1900℃ で結晶成長し脆化 |
真空 | 1700℃まで腐食せず 2150℃以上で著しく 蒸発 |
ゲッター効果に よる脆化 2200℃以上で 著しく蒸発 |
ゲッター効果に よる脆化融点まで蒸発小 |
適合炉雰囲気 | 高温、還元性ガス、 不活性ガス、 低真空(無酸素) |
不活性ガス、高温高真空 | 不活性ガス、高温高真空900℃のNa、Li中 |
■非金属保護管
材質 | 記号 | 概略組成 | 常用温度 | 最高使用温度 | 特性 |
---|---|---|---|---|---|
不透明石英 透明石英 |
QZ | 99SiO2 | 1000 | 1100 | 透明、不透明があり、前者が耐熱性にややまさる。急冷、急加熱に耐えるが、強度は小さい。アルカリ性に弱く酸性に強い。水素還元ガスには気密性がある。 |
ムライト HB |
PT1 | 55Al2O3 | 1500 | 1600 | 融点が1850℃と高く、半融アルミナ(Al2O3) を焼結したもので急冷、急加熱にやや弱く、溶融金属、燃焼ガスに強い。( 加熱炉、蓄熱室の高温度測温に用いられる。) |
再結晶アルミナ SSA-S |
PT0 | 99.5Al2O3 | 1600 | 1800 | ガスに対して気密であり酸化還元の雰囲気でも良好で、化学安定性も抜群の優秀性を示す。( スラブ溶銅、溶融ガラスなどの測温用) |
ネオスーパー | NEO | 89.8SiC-8.2SiO2 | 1500 | 1600 | 炭化珪素の粒子を珪酸塩で結合した耐火物です。高強度、高熱伝導、耐熱衝撃性、耐摩耗性、 耐酸化性に優れています。 |
レアスーパー | LE | 73.3SiC-23Si3N4 | 1600 | 高純度炭化珪素の骨材と窒化珪素の結合相からなる焼結耐火物でネオスーパーより急熱急冷、酸化に対し耐久力がある。Si3N4を含んで特にアルミニウム測温用に適している。 | |
シャモット | S | Al203 69% アルミナ+ ムライト |
1550 | 1600 | 多孔質、耐熱衝撃性、耐食性に優れる。加熱炉などの測温用2重保護管の外管。 |
ジュムラン レッド |
GR | Min% 金属酸化物有含有 AL2O3 |
1900 | 高温耐食性があり、溶融金属に強い。耐熱衝撃性、耐薬品性能に優れている。 耐摩耗性がある。 |
|
炭化珪素 ハルシック-R |
SiC | 99SiC | 1400 | 1600 | 再結晶シリコンカーバイトは炭化珪素の一種で多孔質で高温使用で、荷重による曲りは なく、耐腐食、耐摩耗に対して優れた特性を有する。 |
炭化珪素 ハルシック-I |
SiC-I | 90SiC | 1350 | SIC-I( 反応焼結シリコンカーバイト) は気密質で最高使用温度までは荷重による曲りはなくまた、優れた抵析力を持つ、非常に高い機械的強度と熱伝導率により優れた耐熱衝 撃性を持つ。 | |
窒化珪素 サイアロン |
SiN | 97Si3N4 | 1200 | 1600 | 酸、酸性塩に強く熱衝撃に強いが機械的衝撃に弱い。アルミ溶湯測温用に多く使用される。 |
ジルコニア | ZR | CaO-ZrO2 | 1800 | 2100 | 再結晶アルミナと同程度の耐熱衝撃性で気密質である。強アルカリ、塩やアルカリ金属以外の 溶融金属に対し、化学的に安定。 |
保護管取付、加工品
■フッ素樹脂
高温・低温に強く、耐薬品性に優れ、低摩擦、非接着、電気絶縁性、そして安定性に優れた高性能なフッ素樹脂はフッ素原子を含むプラスチックの総称です。
材質 | 耐熱温度 | 名称 | 特性 |
---|---|---|---|
FEP | -170~200℃ | Fluorinated Ethylene Propylene テトラフルオロエチレン・ ヘキサフルオロプロピレン共重合体 |
完全にフッ素化されたポリマーで 酸・アルカリ、溶剤のほとんどに対し耐性を有する。 |
PFA | -170~260℃ | Perfl uoroalcoxy テロラフルオロエチレン・ パーフルオロアルキルビニル エーテル共重合体 |
耐薬品性はFEPと同じ様な特性を 有するが、使用温度は260℃の連続使用に耐える。 |
ETFE | -104~150℃ | Ethylene Tetrafl uoroethylene テトラフルオロエチレン・ エチレン共重合体 |
部分的にフッ素化されたポリマーで FEP、PFAよりは耐薬品性に劣る。しかし、プラスチックに比べると格段な耐性を有する。 |
PTFE | -180~260℃ | Polytetrafl uoroethylene ポリテトラフルオロエチレン |
フッ素樹脂の代表ともいえる樹脂で、耐薬品性、耐熱性は最も優れ、一般にフッ素樹脂(テフロン)と呼ぶ場合、このPTFEを指すことが多い。 |
■保護管表面処理加工
雰囲気によっては保護管の耐久性向上
のために表面に特殊な加工を施すことに
より、耐久性の向上を図ることができます。

名称 | 耐熱温度 | 厚さ(㎜) | ||
---|---|---|---|---|
フッ素樹脂 コーティング |
PTFE | -100~260℃ | 30μ | ほとんどの化学薬品に対して非常に安定した性質をもっており、わずかに溶融アルカ リ金属やそれらの溶液及び高温のふっ素、三フッ化塩素などに侵される。 |
FEP | -170~200℃ | 50/100μ | 完全にフッ素化されたポリマーで酸・アルカリ、溶剤のほとんどに対し耐性を有 する。 | |
PFA | -170~260℃ | 50/100/300μ | 耐薬品性はFEPと同じ様な特性を有するが、使用温度は260℃の連続使用に耐える。 | |
ガラスライニング | GLS加工 | 450℃ | t1~1.2 | 酸およびガス体の侵入の保護に良好。ホウケイ酸ガラス( 硬質ガラス) に限る。熱ショックに弱い。 |
タングステン加工 | W加工 | 母材による | 保護管の耐摩耗性を向上させるためタングステン・カーバイト系の加工を施している。 | |
ステライト加工 | ST加工 | 母材による | 高温環境下での耐摩耗性、耐食性、耐衝撃性、磨いた面は摩擦係数が小さく、耐摩耗に富む。 | |
アルミナ加工 | AL加工 | 母材による | 電気的絶縁特性が高い。耐摩耗、耐食、耐酸化性が良い。 | |
ジルコニア加工 | Zr加工 | 母材による | セラミック溶射の中で、急熱急冷に最も強い。ガラス、金属、スラグに対して 耐食性が良好。気密質。 |
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チタニア加工 | CH加工 | 母材による | 強酸に対して耐酸性・耐食性に優れている。 | |
バフ研磨加工 | ♯400 | 母材による | 保護管表面を研磨し、鏡面のサニタリ仕上げし、薬品・食品製造装置に使います。 | |
禁油・禁水処理 | 禁油、水 | 母材による | 保護管表面に油分・水分を残さず仕上げます。 |
※ライニングとコーティングの違いは、一般的には被膜の厚さが1㎜ (1000μ) 以上のものをライニング、1㎜未満のものをコーティングといいます。金属保護管の耐摩耗性にはステライト※2 加工、コルモノイ※3加工、タングステン加工、その他の処理を行っています。
(注) |
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